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データを活用した攻めと守りのマーケティング
実態が見えにくいアドフラウドにおいて、つい広告代理店や媒体に任せきりになってしまいがちのアドフラウド対策ですが、大手3社の現役アプリプロモーションの担当者の対策をご紹介します。
攻めのプロモーションをしつつも、予算と時間をアドフラウドからしっかり守れる対策や直ぐに取りかかるべき施策などマーケターのリアルな声をお届けします!
モデレーター
佐藤裕樹(セールス / SpiderAF・Phybbit)
スピーカー
有江佳子(メディア事業本部・サービス推進部・マーケティングチーム / Omiai・ネットマーケティング)
石渡 貴大(広告事業本部・アドテク事業部マネージャー / グノシー・Gunosy)
山本 浩司(マーケティングプランナー / with・イグニス)
佐藤:SpiderAFを導入しているのはwithさんだけですがOmiai・Gunosyさんもとてもしっかりアドフラウド対策をしているのでお招きし、どのように自社で対策をしているのかご紹介いただきます。
まずはOmiaiの有江さんからお話をお伺いします。
Omiai アドフラウド対策
有江氏:(1)アプリインストールのフラウドを検知する場合、インストールからの登録CV率が低かったり、リテンション率が低い・デバイスが偏っている・言語設定が外国語などで検知していきますが、直近だとそれらの条件に当てはまらないフラウドが増えています。
そのため弊社では一番深いKPIから逆算して検知するようにしています。
自社で持っているユーザーデータとSDKのローデーターを紐づけていて、メディアやその先のサイトID単位の粒度で追っていき、KPIと見合っているか見ていきます。具体的にはROAS0%のパブリッシャーIDっておかしいよね。とか。そういった視点で見ていくと実際に見たことも聞いたこともないような手法のフラウドがあったりしました。
石渡氏:ちなみにOmiaiさん最深部のKPIは具体的に何になるのですか?
有江氏:分かりやすいところでいうと課金ですね、ROASが全くついていないなどを見ています。
石渡氏:課金で見た時にサイトIDまで分割すると、例えば500円使ったサイトIDで課金が出るかわからない、積み上げで塵も積もってみたらフラウドでしたという場合はどうされていますか。
有江氏:あくまでの手法の一つとして私が実施していることで、全てのパターンには当てはまらないとは思うのですが。
サイトID単位で見てインストールがあまりついていないIDが散見されても、前方の文字列が同じIDが多くあったりします。前方の文字列が同じサイトIDの出面は大きく変わらないはずなので、そういうところで分類するとある程度の母数でフラウド調査ができるようになります。
佐藤:Omiaiさんだとインストールも多いので膨大な量のデータを見ていると思うのですが、どれくらいの時間を割いていますか。
有江氏:始めの頃は一週間分のローデータを分析するのに丸一日を費やすこともありましたが、今は調査用の定型SQLを使って効率的に行っています。また、最終的には自社で管理画面を作成したいと思っています。
SDKだけで検知できている不正もありますが、深部のKPIを追った時に弊社の中でしか持っていないデータ、例えば登録後の情報に不自然なものがある、といったことを管理画面上で可視化でき、広告代理店さんにお伝えできるような仕組みを作りたいと思っています。
佐藤:対策の(2)広告代理店にもKPIの共通認識を持ってもらう。とはどういうことですか。
有江氏:予算規模や獲得件数が増えていく中で自分ひとりで全てを見るのは大変です。私だけが知っていて、私だけが対応できるのは理想的な状況ではないので「いま最深部のKPIでここまで追っている」というお話を広告代理店さんにもさせて頂くと、そのKPIからずれているメディアは代理店さんの方でも積極的に深掘り調査をしてくれます。
一番現場の近くで広告を運用しているのは広告代理店さんなので、できるだけデータをお渡しし、パートナーとして一緒にフラウドと戦っています。
佐藤:要望通りに代理店さんにやってもらっている感じがしますが、そこまでいくのに難しいところはありましたか。
有江氏:きちんとコミュニケーションが取れていればそこまで難しいことはないかと思います。
ただコミュニケーションがきちんと取れていないまま運用していくと、KPIが合わなくなってくるかと思います。
広告主側でもきちんとデータを把握してKPIをウォッチしているスタンスを取ることで、代理店さんもKPIを意識してくれるので、しっかり「伝える事」と「確認する事」は実施したほうが絶対にいいです。
佐藤:今何社さん使っていますか。また各社異なる点はありますか。
有江氏:複数社さんにお願いしています。意識しているのはそれぞれ得意としている分野をプロとしてお任せすることとかでしょうか。1社さんに大量の媒体をお任せして担当者さんがコミットできる媒体が分散する状況を作るよりは、その担当者さんにはこの媒体を任せる。といった感じです。
コミュニケーションとしては「KPIはこれで、この媒体にこれくらいの予算を使いたいと思っているので協力をお願いします」という話をします。
本当にプロかどうか見極めるのは難しいですが、基本的に一番最初に提案してくるものは、得意分野のことが多いんじゃないかなと思います。
佐藤:会場の方からの質問ですが、フラウドが発生しているにもかかわらず、そこのメディアを続ける事もあると思うのですが、インストールのだいたい何%フラウドが発生しているのですか。
有江氏:アドネットワークでアドフラウドは避けられないものですが、肌感で多いと50%を超えて、少ないと10%くらいです。CPIもCPAも不正はそれぞれ同じくらいの割合で出ています。
佐藤:ありがとうございます。続きましてGunosy石渡さんお願いします。
Gunosyのアドフラウド対策
石渡氏:(1)は書いてあるままで、SDKのフラウド防止機能を利用しています。
(2)は特徴的な対策かと思っていて、データを可視化するためにredashというBIツールを使用しているのですが、そこからアドフラウドと思しきものをデイリーでslackに通知をするようにしています。
実際のredashの通知画面
計測SDKの不正防止機能を導入していても全ては防ぎきれません。
adjustに限らず計測SDKは全てのクライアント・媒体が共通の基準でブロックしましょうという思想だと思っているので、自分たちのKPIに合わない部分も出てきます。例えば海外地域からのインストールが多い場合はフラウドが疑われますが、英語学習のアプリに広告が出ている場合は外国にいる日本人が使っている可能性もあるので、10%程度海外からのインストールが入る可能性もあると思います。そういったケースもあるので一律にはブロックしきれません。そのため、自社独自で設定した基準を超えたら疑わしいものは一旦通知で把握してその後深く確認をして見ています。
佐藤:毎日通知が来て毎日メディアを見るといったことですか。
石渡氏:明らかに不審なものは毎日見にいきます。毎日違うメディアから通知が来ることはなくネットワークはだいたい偏っています。
佐藤:検知する基準はどのように定めていますか。
石渡氏:不正ではない基準とするネットワークを一つ決めてそれに合わせて定めています。
もしかしたらそれすらも対策として緩いかもしれませんが疑うとキリがないので一旦それを指標にしています。
また他のアプリのマーケターとも情報交換をして、信頼できるネットワークなどで基準を決めるのが良いかもしれません。
佐藤:この対策のフローはいつから誰が作ったのでしょうか。
石渡氏:2017年5月頃にそろそろgoogle、SNSなどの広告で獲得が頭打ちになってきて、いろんなネットワークの提案を受けることが増えました。
そしていろいろなネットワークへの配信を増やしたタイミングで怪しい獲得が増えたことに気づいて対策を始めました。
そして、SDKの不正防止や媒体の仕組みを勉強しつつフラウドのパターンを分析して、そこから漏れを発見して自分で作りました。
佐藤:有難うございます。次の対策(3)の広告代理店へのログデータの共有はomiaiさんと一緒ですか。
石渡氏:近いです。グノシーの場合はアプリを開いて記事を読まず離脱する人は少ないのでその割合をみてたりします。「獲得に対してそういったインストールが何割出てますよ」といったデータを集計して広告代理店さんに渡しています。
佐藤:会場の方からの質問ですが、フラウドにエンジニアのリソースを割いている場合はどのように連携して、どれくらい割いていますか?
石渡氏:まずadjustからAWSにログデータを溜めてもらうというところまでエンジニアが行っています。定期的にメンテナンスが必要なものではないので作ってもらった後はエンジニアリソースは割いていません。定常的な基準のチェックはマーケチーム全員がSQLを書けるよう教育をしているので、そこからはマーケ担当で実施しています。
佐藤:有難うございます。次の(4) 社員・アルバイトを含め運用に関わるメンバーの教育 とはどういったものになりますか。
石渡氏:計測SDKなどの仕組みを理解していると、その仕組を悪用してこんな不正ができそう。というのが把握出来るようになります。そうするとどういう媒体やパターンは注意してチェックしようと言った仕組みが成り立ち対策につながっていきます。
また媒体の特性もしっかり教育が必要で、動画のビューでクリックを送るのは100%ブラックではないですが、きちんと説明しなければならないと思っています。代理店さんや媒体がその特性全てを弊社の担当に教えてくれる訳でもないので社内で教育しています。
佐藤:Gunosyさんは何名体制で対策を行っているのですか。
石渡氏:各アプリに社員が1人ついてそこに数人でチームを組んでます。そしてその各社員が横断して情報共有しています。
佐藤:最後の(5)体制、メンバー評価のKPI設計 とありますが、このあたりご説明いただけますか。
石渡氏:CPIや獲得数だけを追うのは本質的ではありません。
デジタルだけでの獲得数を目標として持ってしまうと、テレビCMを打っているときにオーガニックのアトリビューションを奪ってしまう媒体に配信しているとデジタル担当の評価が上がるという現象が発生してしまいます。
その為、そうならないように評価軸を気をつけて深いKPIで設計するようにしています。
佐藤:確かに弊社の無料アドフラウド診断して頂くアプリ広告主で現場の担当者様にレポートをご提出する時に似た話が発生します。
その担当者様のKPIがインストール数だとアドフラウド判定されるインストールが多い場合に上司に報告しずらそうにしているケースが多いですね。
その後連絡が取れなくなってしまい、何も無かった事にしてしまうケースもありました。
石渡氏:IT業界だと2〜3年で転職する方が多いので、表面上のKPIだけを目標にしてしまうと、この3年ことなかれ主義ということで過ごしてしまっている人もいるのではないでしょうか。
佐藤:Gunosy石渡さん有難うございました。次に弊社のアドフラウド対策ツールも活用いただいているwithの山本さんお願いします。
withのアドフラウド対策
山本氏:はい。概要としては(1)の計測SDKの不正防止機能で防げないものを(2)(3)で対策しています。
(1)を導入したのは去年3月のあることがきっかけです。年末年始の繁忙期に向けてFacebookやTwitterだけでなく様々な面に配信を広げていこうと思い、ノンインセンティブ型広告メニューを始めました。
CPA仕切りで実施したこともありROASも好調で「良いメニューを見つけた!」と思っていたのですがが、前任やゲーム事業部の担当者からアドフラウドに気をつけたほうがよいと助言をもらい、トライアルで計測SDKの不正防止機能を試すことにしました。
トライアルを行った結果、それまで300万円ほど使えていた媒体が途端に20万しか消化されなくなってしまいました。
CPA仕切りで実施していたので問題ないと思っていたのですが、実は90%がオーガニックを奪っていまして、これがきっかけでアドフラウド対策にしっかり向き合うようになりました。
その後、SpiderAFのツールに出会い、計測SDKの不正防止とは異なる手法でフラウド検知をしているということを聞き、対策が強固にできると考えて無料トライアルを始めてみました。
佐藤:そこで広告代理店や媒体と握ったアドフラウの判定の条件はどのようなものですか?
山本氏:SpiderAFが推奨しているCTITやデータセンター系のアクセスなどグローバル規模の条件はあるのですが、それをベースに言語設定や海外端末の比率をサービスに合わせてチューニングしました。
佐藤:広告代理店、メディアへ減額交渉する時は「関係性が悪くなるのでは?」など気になり言いにくい場合もあると思うのですが、気をつけていることなどありますか。
山本氏:SpiderAFを導入するまでは日々のレポートでKPIが明らかにおかしいときだけ不正調査をしていただき減算処理をしていただいてました。
その時は「これだけ調整してもらったしいいのではないか」という甘い考えでした。
SpiderAF導入後には全てが可視化されるのでお互いの認識がずれないように、明確に出ているデータに基づいてコミュニケーションをするように心がけています。
佐藤:会場の方からの質問で、世の中に複数のアドベリツールが存在するが導入する際の選定基準で重視したポイントを教えて下さい。
山本氏:SQLのスキルが実務で活かせるレベルではないので、ダッシュボードの見易さや実際に代理店に渡せるアプトプットが出せるかは重要だと思います。
あとは自分たちのサービスに合わせたカスタマイズができる点です。
例えばSDKの不正防止機能は不正判定の条件は開示されておらずブラックボックスなのですが、SpiderAFは条件を任意で設定できるので代理店やメディアと調整できる点は重要でした。
佐藤:(3)異常なKPIを代理店のレポートで確認次第Adjustログで調査 とありますが詳しくお聞かせ下さい。
山本氏:過去の例で言うと、とある広告のとある面でインストールから登録までのコンバージョンレートがほぼ100%となっており、何かおかしいなと思いログデータの調査を行いました。
するとインストールから登録まで通常2〜3分ほどは掛かるはずが、わずか10秒くらいで登録完了していたデータが100件単位で見つかりました。
この辺りは常に正常なデータを把握して異常値を確認してキャッチし調査を実施する事で敏感にアドフラウドを防げるといった感じです。
佐藤:SpiderAFをご利用頂き3ヶ月程経つと思いますが、アドフラウドはどれくらいありますか?
山本氏:平均すると3割で多い媒体では5割を超えてきたりします。
多い媒体はそもそも配信を停止するなど、代理店とコミュニケーションを取りながら対策を進めています。
佐藤:with山本さん有難うございました。
最後に登壇の3名にこれからアドフラウド対策を行う広告主の方にアドバイスや、広告代理店・メディアに期待していることを一言をお願いします。
アドフラウド対策を行う広告主へひと言
有江氏:マーケティングの成果とサービスの売上はイコールではありません。
獲得数だったり、CPIを安く獲得できた。というだけの目標や評価だとサービスの売上には直結しない場合が多いです。どういう顧客を獲得すべきなのかなどを意識し目標にできると、最終的には意味のない獲得が減りフラウド対策にも繋がると思います。
広告代理店さんには一緒になって担当のサービスを大きくしたいと思って仕事をして頂けると目指すゴールが一緒になるので、より良いパートナー関係が構築出来ると思います。
石渡氏:「SQL書いたほうが良い」なんて話もしましたが、基本的にはCVRやCTRの異常に敏感になる所から分析が始まると思います。フラウドに限らず、いわゆるリセマラの分析なども、アプリで発生するログデータをしっかり見る所から把握できるので、ログデータに目を向けて分析を始めると良いと思います。
また、アドフラウドが発生するネットワークに広告費を支払ってしまう広告主がいるから、アドフラウドが無くならないと思うので、広告主が皆一緒になって意識を変えていければいいなと思います。
あとは配信事業者やツールベンダーにお願いしたいことは、動画の成果基準が2秒視聴・視聴完了・視聴後のクリックなど統一されていないので、動画に関する指標が業界全体で定められればいいと思います。
山本氏:やはりデータを見ましょうということです。データを見れば気づけたことが過去たくさんあったので、データの見方や見るポイントを知ることから始めると良いと思います。
どういった見方があるか分からない、自分で抽出が難しい場合はツールを入れるという選択肢もあります。
データ自体は計測SDKを入れていれば取得できるものなので、それをは見るか見ないかはみなさん次第かと思います。
佐藤:ありがとうございます。
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