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2022年に広告業界はゲームチェンジ?国内のネット広告規制で何が変わるのか。
2022年度以降に適用する見通しで、デジタル広告分野では世界初の法制化となるようです。巨大IT法のニュースを耳にしているものの、具体的な内容まで把握している方は、ごくわずかではないでしょうか?ここでは、簡潔に巨大IT法を解説します。
デジタル市場をより良く-デジタルプラットフォーム取引透明化法とは?
2021年2月に施行された「デジタルプラットフォーム取引透明化法(通称:巨大IT法)」は、オンラインモールやアプリストアなどのデジタルプラットフォームの独占禁止法違反行為を未然に抑止する目的で定められた法律です。
現在の規制対象は、オンラインモール及びアプリストア提供事業者である以下の5者です。
物販総合のオンラインモール運営事業者:アマゾンジャパン合同会社(Amazon.co.jp )、楽天グループ株式会社(楽天市場)、ヤフー株式会社(Yahoo!ショッピング)
アプリストア運営事業者運営事業者:Apple Inc.及びiTunes株式会社(App Store)、 Google LLC(Google Playストア)
これらの事業者には、取引条件変更の内容および理由の事前通知、データの利用範囲の開示、さらには公正な取引を確保するための体制整備を行うことが義務付けられ、取り組みの状況や自己評価を含めたレポートを毎年経済産業省に報告します。
皆さんも消費者として利用している場合が多いかと思いますが、基本的にはこのようなプラットフォームを利用する場合、運営元が定めたルールに従わなければなりません。出店側の中小企業やフリーランス、消費者よりもプラットフォーマーは優位的な立場に立っており、自由競争を阻害することも少なくありません。
強すぎるGAFAに規制は必須
例えば、アマゾンが検索アルゴリズムをこっそり変更し、最も関連性の高い製品や売れている製品ではなく、自社製品を優位に表示していたことが内部から告発されています。
また、ゲームアプリを開発しているEpic Games(エピックゲームス)は、App Storeでのアプリ内課金にかかる30%の手数料に異議を唱え、独占禁止法に違反すると、現在アップルに対し訴訟を起こしています。
構造上、対等な立場を維持するのは難しいですが、取引の透明性・公平性を確保する取り組みを促進することで、独占禁止法違反を未然に抑制しようと政府も尽力しています。また法律の施行と合わせて政府は、デジタルプラットフォームを利用する事業者が抱える取引上の課題解決に向けて「デジタルプラットフォーム取引相談窓口」を設定しました。窓口では無料で相談に応じたり、場合によっては弁護士の情報提供や一部費用負担などの補助も行うようです。
今まで利用事業者は弱い立場で、何かあっても泣き寝入りせざるを得ない状況でしたが、相談窓口が設置され、より公平な環境へと改善されていきそうです。
日本政府が巨大IT新法の対象にデジタル広告の追加を発表
政府は先月、著しい発展を遂げるデジタル広告分野の課題への対応策を整理した最終報告をまとめ、デジタル市場競争会議を開きました。
以前別の記事でも記述したように、デジタル広告分野の課題は大きく分けて4つ、透明性・データ活用・垂直統合・公平性があります。
それぞれの詳しい説明は割愛しますが、中間報告書とほとんど内容は同じなので、気になる方はこちらの記事もご覧ください。
[10分でわかる!日本政府が発表したデジタル広告市場の中間報告まとめ]
巨大IT新法は、いつから?どんな内容で誰が対象?
デジタル広告の法整備を進めていますが、2022年以降に新法は適用される見通しです。ちなみにデジタル広告分野でルールを導入している国はなく、日本は世界に先駆けて整備を進めていくようです。
内容や対象は法制面での検討を進める上で決定していくため未定ですが、主に大規模プラットフォーム事業者に対する内容で、Googleやヤフー、Facebookなどが対象になると推測されます。
プラットフォーム事業者に対する透明性への対応
以下が最終報告書で述べられている具体的な内容です。
・デジタル広告品質に関して
アドフラウドなどの質に関する情報について取得可能な情報の内容、取得の方法など分かりやすい開示を要求する。取り組み状況に対し、政府がモニタリング、レビューを行う。
・第三者計測ツールの受け入れに関して
第三者ツールの適切な接続対応を行うための手続きや体制の整備や接続できない場合の理由開示を要求する。取組状況に対し、政府がモニタリング、レビューを行う。
上記のように、まずはブラックボックスとなっている様々な情報を開示し、透明性を高める取り組みがメインです。その取り組みの内容や自己評価を政府へ報告し、独占禁止法違反がないか行政がモニタリングとレビューを行っていくのではないかと推測されます。透明性以外にも、データの囲い込みの懸念や利益相反、自社優遇、手続きの公平性や検索エンジなど、デジタル広告に係る主要な課題に対して、情報を開示しモニタリング、レビューを行うという内容が課される見通しです。
パブリッシャーや広告主の対応は?
ほかの事業者もデジタル広告に関する課題に真摯に対応するよう記されています。パブリッシャーは、自らのコンテンツの価値を評価してもらえるような仕組みや環境を構築していくよう、広告主は、デジタル広告の質に対する意識を高め、質の高いコンテンツを配信先として選択していけるよう、民間ツールを活用し、自主的に取り組んでいくことが推奨されています。
今後のデジタル広告業界の発展のために取り組むこと
デジタル広告は様々な問題を抱えていますが、政府が一番注目しているであろう課題は「透明性」で、その中でもアドフラウドなどデジタル広告の質に関する説明責任を徹底することだと述べています。
デジタル広告の品質を正しく理解するためには、アドベリフィケーションの知識はもちろんのこと、広告の質を正しく計測し確認する必要があります。今回の新法での対象者は、巨大プラットフォーマーと限定的ですが、今後はその対象が広がり、広告主自身が広告配信をする際に第三者計測ツールを活用し、広告品質を計測する動きが強まっていく、もしくは義務化することも起こりうるでしょう。
そのような時代の流れに乗り遅れないよう、まずは自社の広告の運用状況を確認してみましょう。Spider AFの1ヶ月の無料お試しでは、広告の品質を計測し可視化します。デジタル広告の永続的な発展のために一歩を踏み出しましょう。