記事

アドフラウド対策とモバイルアプリマーケティングの指標を解説!

アドフラウド対策とモバイルアプリマーケティングの指標を解説!
目次

昨今、アドフラウドの手口はますます巧妙化されてきており、トラッキングツールや配信ネットワーク、広告配信運用者がそれぞれ検知・対策をするだけでなく、各々が協力し対策を行っていく必要があると考えております。

今回、モバイルアプリ広告の総合分析ツール「Metaps Analytics」にてモバイルアプリ広告のトラッキング機能を提供しているメタップスリンクスと、広告の運用を広告代理店として実施しているトーチライト、アドフラウド対策ツールの「SpiderAF」を提供するPhybbit (フィビット) 、それぞれの視点からアドフラウドに関わる調査の結果と不正対策、並びにアプリ運営者としての指標をお伝えさせていただきます。

 

アドフラウドの現状

モバイル広告のトラッキング機能を提供している各社並びに配信ネットワークはアドフラウドに対して日々調査・対策を実施しておりますが、一般的にアドフラウドは世の中に10%弱存在していると言われています。Phybbit社の調査によるとこの数字はアドネットワークにより変動すると言えます。実際には、対策を強化しているクリーンなネットワークでは5%以下、一方対策の甘いアドネットワークでは10%以上を上回り、タイミングによっては70%や80%といった数字を出すこともあるというのが現状です。また、データを分析しているとアドフラウドの手口はより巧妙になってきており、複数の視点で確認しないとアドフラウドであることが見抜けなくなってきております。
 

日本の広告で起きているアドフラウドの4割強は海外からで、うまく偽装をしてこちらが国を追えていないものを合わせると、6~7割は海外からと思われます。

特に北米・中国からの攻撃が圧倒的に多く、特に巧妙です。毎日起動したり課金を行うようなボットを組み合わせたり、トラッキングツールの裏を描いてオーガニック(自然流入)ユーザーや他のアドネットワーク事業者の成果を横取りしたり、成果を確認する運用だけでは対応できにくくなっているのが現状です。

(Phybbit調べ)

アドフラウドの定義

前項でアドフラウドの現状を整理しましたが、検知・対策を行うためにも、現存するアドフラウドを知っておく必要があります。そこで、世の中にある様々なアドフラウドの手法を整理しています。また、インターネット広告の世界においての対象は、PCやスマホ、モバイルアプリとありますが、今回はモバイルアプリ広告業界においての主な方法をまとめました。

 

1. クリックスパム

オーガニック経由のユーザーを自分の成果として奪い取るためにクリックを多発させるフラウド。広告をバックグラウンドで表示させてクリックを発生させたり、インプレッションをクリックに偽装して成果を奪い取ります。
実際にこのような大量のクリックを撒き散らし、オーガニックユーザーや他のアドネットワークの成果を奪うアドフラウドは近年増えています。

2. クリックスタッフィング

デバイスのバックグラウンドでユーザーが気づかないうちにアプリ内の広告のクリックを生成するフラウド。ユーザーがオーガニック経由でインストールしたアプリの成果を奪い取ります。

3. アドスタッキング

1つの広告枠に複数の広告を重ねるフラウドで、ユーザーに表示されない広告に対して、インプレッションやクリックを偽装します。

4. クリックインジェクション

便利なアプリにみせかけた悪意のあるソフトウェアをインストールさせ、ユーザーが新しいアプリをインストールするタイミングを検知して、新しいクリックを注入 (インジェクション) するフラウド。ユーザーがインストールしたアプリの成果を奪い取ります。

5. SDKスプーフィング

インストールを通知するURLを解読やハッキングし、不正なインストールを通知させるフラウド。トラフィックを偽装し、インストールの成りすましを行い成果を計測させます。他にも、SDKに課金という成果を通知し、実際のapple storeでは課金されないというスプーフィングもあります。

6. フェイクインストール

エミュレータに広告ID付きの端末を作成して成果を発生させたり、ユーザーが実際の端末を利用して成果を発生させるフラウド。

7. インストールファーム

大量のスマートフォンを用意し、広告のクリックやアプリのインストール、起動などを半自動的に行うフラウド。最近では翌日以降に起動してリテンションレートを維持するケースもある。

 

各社のアドフラウド対策

アドフラウドの状況を整理して、実際にどのように検知・対策を行っていくのか。それぞれのポジションでのアドフラウド対策をまとめました。

 

アドネットワークの対策

アドネットワーク毎にアドフラウドの割合が変わるように、アドネットワーク毎の対策にも大きな差があります。未だにアドフラウド対策のできていないアドネットワークもあれば、社内にアドフラウド対策チームを作り、IPアドレスやサイト、アプリ等のように二重三重に監視しているアドネットワークもあり、各社によって対策がバラバラです。
そのため、今後はアドフラウド対策や判断基準の統一化をしていく必要があると考えており、SpiderAFでは、各アドネットワークと一緒に全ての会社で共有できるブラックリストを開発中です。このブラックリストを監査用のAPIとして提供し、各アドネットワークと共に業界の健全化を進めていきます。

 

トラッキングツールの対策

Metaps Analytics では、戦略的業務提携を行っているKochava社と協力してアドフラウドの検知・対策を実施しております。アドフラウドの検知と不正対策については、下記記事にまとめてあるのでここでは割愛します。
広告の不正利用の検知と不正対策について: https://www.metaps-links.com/blog/2017/07/04/adfraud/
広告の不正利用の検知の新しい指標: https://www.metaps-links.com/blog/2018/06/28/adfraud-new-ways/

 

広告代理店の対策

トーチライトでは、広告主から媒体まで、一貫した定義を持って取り組むことによる、アドフラウド発生時の対策強化に注力しています。
アドフラウドは、発生を防ぐことが難しいため、受発注時に予め事前定義を取り決めておくことで、発生時の被害を一定数軽減することが可能になります。
トーチライトで定義としている項目の一部には、以下のようなものがあります。

 

  • 瞬間的な連続ダウンロード

 

  • ダウンロードから初回起動までの時間 (正常な挙動との比較)

 

  • 国内で販売されていない端末からの大量ダウンロード (Android: AOSP端末)

 

  • ダウンロードされたOSバージョンと国内のバージョンシェアとの乖離

 

  • 配信停止依頼後のダウンロード数大量増加

 

  • 海外言語設定端末からのダウンロード

 

アドフラウドに対し、積極的に向き合っている媒体、共に戦える媒体を選定していくことも、非常に重要な要素であると考えています。

 

モバイルアプリの傾向と調査結果

アドフラウドの検知・対策を行うため、Metaps Analyticsのデータを分析し、モバイルアプリの利用状況を確認した所、アプリのインストールタイミングとアプリインストール後の初回起動までの経過日数に乖離が見られるデータが確認されました。
通常、ユーザーはアプリを利用する目的でインストールを行うため、インストール後は比較的早くアプリを起動します。そのため、アプリのインストール日とアプリインストール後の初回起動日までの時間をユーザー単位で抽出し、様々な条件で分析を試みました。調査を継続した結果、特定の条件下で下図のように、インストール日と初回起動日が同じように推移するグラフが作られる場合と、特定日に大量にインストールを行い、アプリの初回起動のタイミングが分散されているものを発見しました。
 

ユーザーのインストール日と初回起動日の経過時間に乖離がない (アドフラウドがほとんどない) 場合、下図のように推移するグラフが作られました。

図1. インストール日と初回起動日の推移の図

また、ユーザーのインストール日と初回起動日の経過時間に乖離がある場合は、下図のように特定日にインストールを大量に行い、初回起動を分散していることが明らかなグラフが作られました。

図2. インストール日と初回起動日の推移の図

トラッキングツールでは、アプリを起動したタイミングでアプリのインストールを検知することとなりますが、Metaps Analyticsでは、アプリを起動したタイミングで、ユーザーがインストールした日時の計測も行っております。そのため、上図のように、インストール日とアプリの初回起動日の分析も行える機能を提供しております。

アドフラウドの対策を行うためには、コンバージョン計測時のデータを確認するだけではなく、アプリ利用後のユーザーの行動も合わせて分析する必要があると改めて考えさせられるデータとなりました。

 

対策と考え方

アドフラウドは常に新しい手法が発生しているため、日々利用状況を確認し、疑わしいデータが確認された際には、データの分析を行う必要があります。また、トラッキングツールやアドネットワーク、広告代理店それぞれが実施する対策だけでなく、モバイルアプリ運営者のプロモーションKPIとユーザーの行動(イベント)を掛け合わせた指標でも確認していく必要があります。
例えば、下記のような視点で分析を行うことにより、疑わしいデータの検知も行えます。

  • キャンペーン × リテンションレート

 

  • インストール日 × 初回起動日

 

  • インストール日 × リテンションレート

 

尚、Metaps Analyticsでは、アプリの初回起動日だけでなく、アプリのインストール日も計測している唯一のツールとなります。

 

今後に向けて

アドフラウドは、広告効果を偽ることに対して発展した技術となります。アプリマーケティングにおける正しい指標はDAUへの貢献度合いとなります。広告代理店やアドネットワークにすべてを任せるのではなく、マーケターとプロデューサー両者のKPIを掛け合わせて異常値を発見できるようしていくのが正しい姿だと考えております。

また、メタップスリンクスでは、今回の調査結果に基づき、引き続きアドフラウド対策の強化を行っていくと共に、アプリの利用状況を分析してアプリ運営者様がアプリの成功に注力できる環境を構築してまいります。

 

おわりに

アドフラウドは、広告費の被害だけでなく、広告効果の分析やプロダクトの評価を妨げるものでもあります。トラッキングツールやアドネットワーク側でも日々対策を実施し改善を続けておりますが、今回の記事で特に伝えたいポイントは、アドフラウドの対策をトラッキングツール、アドネットワーク、広告代理店だけに任せるのではなく、より強固なアドフラウドの対策を実施するのであれば、マーケターとプロデューサー両者の視点を掛け合わせ異常値を発見する工夫をする必要があります。
弊社では、蓄積されたデータを分析してサービスの改善を実施していくだけでなく、アプリに親身に寄り添う経験豊富なコンサルタントが揃っております。アドフラウドの対策だけでなく、アプリマーケティングの指標について悩んでいる方は是非一度お問い合わせください。

 

株式会社Phybbitについて
Phybbit(フィビット)は、アドフラウド対策ツール、SpiderAFの開発と提供を行っている会社です。日々進化するアドフラウドに対し、データサイエンティストのコンサル支援も行っております。
運用担当者の手を煩わせることなく、精度の高いアドフラウド対策を皆様にご提供できるよう、研究を続けてまいります。
株式会社Phybbit
代表者:大月 聡子
URL:https://phybbit.com/

 

SpiderAFについて】
SpiderAFは、誰でも簡単にアドフラウド対策を行えるよう、自動化・非属人化に特化した、AI搭載アドフラウド対策ツールです。アドネットワーク事業者様をはじめ、代理店様、広告主様まで広くご利用頂けるツールを目指します。
ブラックリストを一緒にシェアし、業界の健全化をお手伝いいただけるアドネットワーク様を募集しております。
URL:https://jp.spideraf.com/

 

株式会社トーチライトについて
トーチライトはFacebook社、Twitter社、LINE社の各ソーシャルメディアから公式に認定されているマーケティングパートナーです。 (Facebook Marketing Partner、Instagram Partner、Twitter Official PartnerおよびLine Ad Tech Partner)
ソーシャルメディア広告専門の代理店として Facebook、Instagram、Twitter、LINE の広告を配信・管理することが出来る広告プラットフォーム「Sherpa」を提供しています。
商号:株式会社トーチライト
代表者:矢吹 岳史
URL:https://www.torchlight.co.jp/

 

メタップスリンクスについて
株式会社メタップスよりマーケティング事業の継承を受け平成28年12月1日に発足しました。
Metaps Analyticsを中心に様々なプロダクトを開発しデータを軸にしたスマートフォンビジネスのサポートを行っているメタップスグループの中核企業です。
当社では蓄積したデータを元にアプリの失敗の要因を最大限抑止し、アプリを成功に導くコンサルティングができる会社を目指して参ります。データを軸としたアプリ運用のコンサルティングを強みとし、新しい手法でアプリ発展のご提案をさせていただきます。
商号:株式会社メタップスリンクス
代表者:高木 誠司
URL:https://www.metaps-links.com/

 

【Metaps Analyticsとは】
ユーザーの行動分析からデータ資産化を実施し、その後のマーケティング施策や収益化、内部施策などをワンストップで提供する総合管理ツールです。
マーケティング支援、データのコンサルティングを通じて得たナレッジやノウハウを時代に合わせた機能としてアップデートしていく予定です。

 

 

◆広告効果が出ないのはアドフラウド(広告詐欺)が原因かも

広告運用は様々な効果検証が必要となってきます。ただ、どんなに見直しを行っても効果が出ないことがあります。

もしかしたら、それはアドフラウド(広告詐欺)が原因かもしれません。

アドフラウドとは広告主から不正に広告費を搾取されており、その企業の広告費の流入先が実は反社会勢力に流れている可能性も。

実際にアドフラウドどのような手口かは以下の記事をご覧ください

【関連記事】ネット広告詐欺はどのような手口で行われる?アドフラウドの手法9つ

 

 

▶︎▶︎アドフラウド(広告詐欺・広告不正)って何?◀︎◀︎

そもそもアドフラウドって何?企業にとってどんな影響があるの?と疑問にお持ちですか?

そのような方に向けたウェビナーを開催しました。

サクッとアドフラウドについて知りたい方は以下オンラインコンテンツをご覧ください。

【推定年間被害額1000億円超え】 広告効果を劇的に悪化させるアドフラウドとは?

▶︎▶︎2024年アドフラウド調査レポートを公開しました◀︎◀︎

Spider Labsの最新アドフラウド調査レポートを公開しました。

今回のSpider AFでの調査では2023年の1年間で解析したウェブ広告の29億2,500万クリックのうち、約4.9%にあたる1億4,332万クリックがアドフラウドであることが判明。これはおよそ71億6,625万円(1クリックあたり50円で計算)規模のアドフラウド被害があったと推測しております。

他にも新たに検出されたアドフラウド被害事例や、詳細数値が無料でご覧いただけます。

ぜひ以下リンクよりご覧ください。

>>ダウンロードはこちら<<

Spider AF