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効果の良い広告とは?4社が語る広告効果計測の実態

効果の良い広告とは?4社が語る広告効果計測の実態
目次

この勉強会は「アドフラウドを正しく理解してもらい、広告業界全体で取り組むよう啓蒙する」 というミッションを掲げ実施しています。今回はそのイベントの様子をパネルディスカッション毎に分けてお伝えします。パネルディスカッション1「広告配信事業者各社のアドフラウド対策」はこちらから!

第二回アドフラウド勉強会 パネルディスカッション2のテーマは「アプリプロモの知られざる裏側!」
本セッションではアプリのプロモーションに特化して知られざる裏側を言及していきます。

■モデレーター
山田翔(株式会社アドウェイズ/Bulbit株式会社)

■ディスカッションメンバー
二宮幸司(ファンコミュニケーションズ株式会社 )
池田寛(Supership株式会社)
佐藤基(MOTTO.inc)

アドフラウドとは

山田翔氏(以下山田):まずアドフラウドとは?ということで要約すると望ましい成果に全く繋がらない、詐欺的な広告の消化がされているものということで、様々なアドフラウドがあります。

アドフラウドというと上記図左3つの掲載・表示・遷移を偽る不正の話が多いのですが、今回は成果、効果を偽る不正について話していきたいと思います。

 

アプリプロモーションにおいて成果、効果の良い広告とは

山田:では、アプリプロモーションにおいて成果/効果の良い広告とはどういったものでしょうか。

二宮幸司氏(以下二宮):アプリの広告でいうとCPIや最近だとROASなどいろいろな指標があるんだと思いますが、利用した広告費を使った分回収できているか(広告出稿しているときの利益>広告出稿していないときの利益)ということです!

池田寛氏(以下池田)パブリッシャーサイドとしては収益性が高い、CPMが高い方が良いです!

佐藤基氏(以下佐藤)広告主としてはCPAが安い方が良いです!

山田:広告主や代理店は獲得件数が取れてCPIが安いところを重視してその後課金が付いてくるところを追いかけているのではないかと思います。

 

CPIの定義

山田:CPIとは獲得単価(広告費/CV)。ここでいうコンバージョンの定義があやふやになってきているなと思ってましてコンバージョンに至るまでの流れをおさらいすると、
①広告が表示されてユーザーが見る②興味をもってクリック③ストアでアプリをインストール
この流れが連続しているものを基本的にはコンバージョンといいますよね、いわゆるクリックスルーコンバージョン。
コンバージョンにつながった最後のクリックを評価してコンバージョンをカウントしています。

少し前に業界で話題になったのが、広告を見た事自体に効果があるという話がありました。
広告を見た後にクリックしなくてもその後コンバージョンしたら広告の効果があると言えるのではないかという考え、いわゆるビュースルーコンバージョン。

①広告がユーザーの画面に表示されて2秒たったらカウントを取る②その後ユーザーがインストールしたらコンバージョンとみなす

実際に昨年一昨年結構あったと思いますが、皆さんどういう風に捉えていましたか。

二宮:2秒、(画面に広告が)50%表示というのはIABが定義したビューアブルインプレッションの定義だと思います。前半のセッションでもあったP&Gの話は、広告見られているのか?、CPMで課金する場合は広告が見られているかがすごく大事になってくるのにそこがそもそも見られていないのではないか?だからビューアブルimpの要件を定義しようとなったわけで、ここでいう2秒というのはビューアブル(広告視認)の定義で、2秒みたらコンバージョンに結びつけるという理論は少し強引な気がしています。

山田:SSPとしてはどのように捉えていましたか?

池田:パブリッシャーサイドだと広告収益が高いというのは、あくまでCPC、CPMの単価が高いという感覚でしかなかったです。その裏側の仕掛けまでは本来は意識する必要がないと考えていました。

山田:クライアント側としてはどうでしたか。

佐藤:2年ぐらい前に動画広告が盛り上がりきた時にクライアントとして期待していました。よく言われていたのは静止画と比べるとクリックレートが低くなる、CPAが高くなるケースが多かったです。ただ間接効果への期待があった時期で、その時出てきたのがビュースルーコンバージョンでした。

山田:ビュースルーコンバージョン自体が良い悪いという話ではないと思います。元々は広告を見た後に広告をクリックしてその後のクリックを起点としたコンバージョンを評価するという指標だったものが、広告を表示することにも価値があるという前提でクリックと同等に評価されている時期がありました。本来は別のエンゲージメントとして評価する必要があるため、トラッキングツール側がクリックとは別にビューをカウントする動きが進んだため、クリックとは別のものという認識が広がってきていると思います。

一方で最近は動画による広告配信が増え動画を視聴するというエンゲージメントが加わり、①View 広告が表示(②Watch 動画が再生されユーザーが見る)③Click クリック④CV コンバージョンする
という流れに変わってきてます。先ほどのビュースルーコンバージョンと同じで動画を5秒10秒観たら「広告を見た」という事にしてその後のインストールをカウントするのが最近増えてきていると思いますが実際どうですか。

二宮:アドネットワークの動画のプレイヤーは増えてきており、どこで課金するかは業者により異なりますが5秒以上見たらコンバージョンに紐付けているところが多い印象です。
個人の感想としたら、スマホ動画広告の場合、全画面もしくはレクタングルサイズ以上でないと、Watch(ビュースルーコンバージョン)の概念を入れるべきではないと思います。
ビューの問題は、アメリカで起こったことが2年後に日本でも起ることが多いので、そろそろ日本でも問題になってくるのではないかと思っています。

山田:SSP側は動画のトラフィックは増えていますか。

池田:はい、増えてます。例えば、Facebookアプリのタイムラインには動画広告が一般化している印象です。静止画よりも伝わる情報量が多いので、広告効果も高く、収益効果も期待できるとパブリッシャーにお話して導入を促進していますね。

佐藤:広告主側でも情報量が全然違い、ハマれば効果も高いため出稿意欲は高いです。
今でも動画をCPCでの評価するのがまだまだ一般的です。ビュー、Watchは期待している人は多いですがメディア側のCPMとのせめぎ合いが起きており、5秒がいいのか10秒がいいのかまだ曖昧です。
どちらかというと視聴時間は短く定義されることが多く、動画を全て見た人がどこまでコンバージョンしたかが判れば納得感がありますね。

山田:動画自体に意味はあり評価されるべきだと思いますが、今の状況はそんなに簡単ではないですよね。
動画を見た時にストアに飛んでインストールした場合と、動画を5秒10秒見て、後でインストールしたものが同様に評価され、その結果動画広告が評価されている様に思えます。
クライアント目線では異なる視点で評価している事はありますか。

佐藤:この問題がまさに起きています。ラストクリックで評価するというのがありましたが、ここに新しい評価方法が加わった事で評価が変わってしまいました。
特に今回のテーマであるアプリは比較的コンバージョンが多い商材でオーガニックのコンバージョンも多いです。
評価方法が定まっていないと結局それは本当に効果なのかという話が出てきており、クライアントの中でも一般化しています。

二宮:弊社は動画をはじめたばっかりということもあり、上記図の一番上のケースがもっとも多いのですが、クリックからのコンバージョンの成果とビューからのコンバージョン成果が、一枚のexcelシートで比較されている現状はかなりきついです。CVRがそもそも30〜40%の媒体と同じ単価、同じ表、同列で比べられ予算が割り当てられるとなかなか難しいと感じています。

山田:僕も同じ様な感覚で、それぞれ広告効果はありますが全く違うインパクトを持っていると思います。
例えば広告表示・クリック・コンバージョンの関係値でいうと広告表示からクリックされるのが0.1%、そこから良くて10%がコンバージョンになる。
配信量でいうと1000倍、その後10倍違うという世界にも関わらず、同じ様に評価してしまうと広告効果を正しく理解できないのではないかと感じています。

そしてこのような事態をさらに複雑にしているのが、ネットワーク毎に何をクリックとして評価するのかが異なっているという現状です。

山田:弊社「UNICORN」では実際ユーザーがストアに飛んだものをクリックとしてカウントしています。
他のネットワークでは動画を10秒見たらクリックとしてカウントするものや、5秒でカウントするものも増えてきていて、クリックという指標が持つ意味が多様化し、複数ネットワークを横並びで比較することができなくなってきています。
皆さんはどれくらい認識されているでしょうか、クライアントからみたらどう見えているのでしょうか。

佐藤:非常に分かりにくいと思います。
ビュースルーコンバージョンとラストクリックのコンバージョンを一緒くたにするべきではないということは徐々に広まっています。CTR、CVR、CPIを見れば明らかですが、それが10秒か5秒かでカウントされているかというのは把握がしにくいです。
クライアントとすればより安くより多くとなります。特にペイドプロモーションを担当している方は少しでも広告の効果を上げたいという力学が働いてしまい、目が曇ってしまいがちですが理解を広げていかないと危ないと思っています。

 

ネットワークごとの違いを把握していますか?

山田:意外とネットワークごとの違いを把握せずに一緒くたに扱っているのでは?と感じています。
クライアントさんの決済者が見るシートは粒度が粗いもので、このように広告費・獲得件数・CPIしか見られていない場合が多いです。

しかし手前の指標をみてどういうコンバージョンなのか性質を見極めることが重要でないかと考えています。
一見CPIの安いNetworkBやCが良いと判断されてしまいますが、配信状況を見るとどれが良いのか考えが変わってくるのではないでしょうか。

  • 会場の皆さんどうでしょうか -

半分くらいの方はどれが良いのか判断できないように見受けられますが、これがまさに今起こっていることだと思っています。本来であればこの表から配信状況を汲み取れればいいのですが、自体が複雑すぎて把握できない、なのでとりあえず比較しやすい指標で評価をしてしまう、そういうことなのかなと。

NetworkB:動画視聴でクリックを発生させている広告
広告500万回表示した後に100万回クリックされている、5回に1回クリックされています。
おそらく動画がバシンと出ている広告枠でページに入ると再生が始まり、5秒10秒は再生してしまう。
結果クリックが起こるためその後オーガニックやCMもしくは動画広告をみてインストールするのかカウントをとる事でコンバージョンの数が取れます。そのように理解した上で相対的にCPIが安くなるので、他のネットワークよりCPIが安くて当然、と考えられればいいのではないかと思います。

NetworkA:古典的なディスプレイ広告
そのためクリックからのコンバージョンのみが評価されるためCPIが高いです。
 

それぞれ特徴があるのでそこを理解した上での評価なら良いのですが、様々なネットワークが混ざると評価が難しくなってしまうのかなと。これをまとめてCPIだけで判断するのは大変というのが今の状況だと思っています。SSP側からすると全く見えないですよね。

池田:アドジェネレーションのサービスは基本的にアプリのパブリッシャーに多く使ってもらっています。
平均のCTRは0.15〜0.2%です。ビュースルーが出てきた当時CTRが20%、30%とか、考えられない数字に跳ね上がる広告枠が出てきて、しかもそういうところに限って収益が高かったのです。これを良いものと考えてよいのか困惑しました。

山田:前半のセッションの話からすると異常CTRに入るという事であっていますか。

池田:おっしゃる通りで、CTR1%越えでマークし始めます。
指標自体が意味をなさなくなり、人の目で確認するのがかなり難しくなってきました。

山田:これがボットで叩いているものであれば弾けていると思いますが、クリックに違うものを混ぜ込んでいると弾けていない気がしています。
ネットワークによって何をカットするか、何を評価するかが異なるのでクライアントや代理店は正しく扱えないのではないかと感じています。

 

このような現状をどう考えていますか

山田:アドフラウドに対して認識を統一していかないといけません。
「広告配信に関わる人たちの意識をどのようにして統一するか」が今日のメインテーマとなりますがどう思いますか。

二宮まず事業者が認識を合わせていかないと何も始まらないと思います。
ビュースルーコンバージョンが悪いということではなく、ルールを作るべきかなと。今年は、一部において動画の計測ハックにより、本質的な広告の価値や実体経済とかけ離れたところで単価が上がりバブル状態であることは間違いないです。
いつかは、バブルが弾けるタイミングがくると思っていますが、それにより一番被害を受けるのは広告主とメディアです。「広告主がOKだからとかメディアがOKだからやっていいでしょ」ということをよく言う会社もいますが、インターネット広告業界はもうそういうステージのものではないと感じています。

佐藤:どこからお金が出ているかというとクライアントから出ているため、クライアントの責任は非常に重く、効果に真摯に向き合うべきだと思います。自分の評価で判断するのではなく、全体効果の視点からの判断が必要でアドフラウドリテラシーをあげていく責任があります。

池田:我々のようなSSP事業者や、パブリッシャー側も儲かる広告ならウェルカムという姿勢から一歩進むべきだと考えています。
おそらく、広告代理店さんが制作する広告クリエイティブは各アドネットワーク事業者で同じものを使うケースも多いと思っています。なのに、全く同じ広告枠でもアドネットワーク事業者によって収益が全然違うということは違和感を抱くほうが自然です。そうしないと、計画値の策定時など、急に収益が下がったりするリスクを背負うことになります。
そういうリスクを回避するためにも、プラットフォーム側としては、例えば視聴深度を測れる規格(VASTやVPAID)に対応するなど、正しい指標やルール作りに対応できる環境を整えることが大切だと思っています。

山田:個人的にはwatchの指標を各社取り入れた方が良いと思っています。動画を10秒5秒見ただけでクリックと同じにしている事が良くないかなと。指標をハックして成果に繋げるのではなく、本質的な広告効果を高めて獲得効率を上げたり、異なる指標を取り入れるのであれば別のものとして評価すべきだと考えています。

 

Q.ビューアビリティーの計測について

ビューアビリティーがどういう実装でローリングされているかどこまで目を向けているか現状を知りたいです。
メディアが取れていると言う事を鵜呑みにしていますか、疑っていますか。

山田:最終的に広告をクリックしたインストールのみを評価する広告配信であれば、細かくビューアブルかどうか取らなくても評価はできると思っています。
UNICORNではさまざまな対策をしてトラフィックを精査していま
大体月3,000億ビッド程度受けて、ボットが叩いていたり、CTRが高すぎるものおよそ1,700億ビッドを買い付け対象から除外しています。
かつ、バナー上の誤タップになりやすいエリア定義して、そのエリアをタップした場合は遷移させないようにし、実際にストアに遷移したクリックのみをカウントした上でコンバージョンを評価することで意味のあるトラフィックを選別しています。
そういった配信のなかの一つの指標としてどのぐらいビューアブルになったのか動画がどれくらい再生されたかカウントを取っているのですが、ビューアブルレートが低くても成果につながるトラフィックもたくさんあるので一概低いから悪いとも言えないなと思っています。

二宮:広告主目線でいうと怪しいと思ったら、本格的に調査するためには事業者側から全てログをもらって分析をしてみる、もしくは全てのログを正しい形で出させレポートで出てくる数字の裏側までみる必要があるのではないでしょうか。

山田:第3者配信ツールを使うのが海外では当たり前になってきているので日本でも当たり前になってくるのではと思っています。

佐藤:どこがビューアブルかが各メディア事業者で違うため、その結果評価が難しくなって判断を誤らさせていると思います。統一の指標でやってくれれば良いなと思います。

池田:仕組みとしてはVASTなどで接続を行っていれば配信事業者側で計測可能な状態ですが、実際どうしているのかは事業者側の裁量となるのでパブリッシャー側ではわかりません。今後は第3者による公正な評価計測ツールも普及し、是正されていくと期待しています。

 

アドフラウド勉強会は定期的に開催する予定です!次回は12月になりますのでこちらよりグループ登録をお願いします。

 

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